信頼性の高い測定方法を設計しよう (2)
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- 作成日: 2025/12/13
- 更新日: –
はじめに
機能性表示食品制度では、「科学的根拠に基づく機能性の評価」が必須です。その根拠の質を決める大きな要因の一つが測定方法です。
適切な測定計画は、「機能性があるかどうか」だけでなく「その機能性を正しく証明できるかどうか」 を決定づける極めて重要な要素なのです。
本コラムでは、測定の基礎概念である 定度 (precision)・真度 (accuracy)・妥当性 (validity) を、機能性表示食品の開発場面に合わせて解説します。
事例: 食物繊維入り飲料の研究
あなたは「食物繊維飲料の摂取量によって、12週間後の体重変化を予測できるか?」をテーマに研究をはじめました。しかし、12週間後の体重を電子体重計で測定することになりましたが、予備調査で以下の問題が発生しました。
- 校正用の10 kg錘を測ると10.2 kgと表示された
(機器の表示に体系的なズレ) - 10 kgの錘を20回測ると、10.01 ± 0.2 kgとばらついた
(再現性が悪く、測定値の分散が大きい) - 試験参加者が測定時に体を揺らしたり、正しい姿勢を維持できない
(高齢者がふらつく、重心が定まらない、片足に体重を乗せるなど) - 試験参加者が乗るたびに数値が安定するまで数秒以上揺れる
(体組成計の安定化に時間がかかる、測定環境に振動がある) - 測定タイミングが試験参加者ごとにバラバラ
(朝食直後・空腹時・服の重さ・水分摂取量の違いなど)
それぞれが 真度 (accuracy)・定度 (precision) のどちらに関連する問題か?また、原因が「測定者/対象者/測定機器」のどれにあるか分類し、具体的な対策を考えてください。
解答・解説
3.1 「a. 校正用の10 kg錘を測ると10.2 kgと表示された」
- 分類
真度 (accuracy) の問題 - 原因
測定機器による誤差 (キャリブレーション不足) - 具体的対策
- 測定前・定期的な校正 (キャリブレーション) の実施
- 機器の設置環境 (床の水平性) の確認
- 同一機器・同一条件で測定するSOPの作成
- 必要に応じて機器の交換
3.2 「b. 10 kgの錘を20回測ると、10.01 ± 0.2 kgとばらついた」
- 分類
定度 (precision) の問題 - 原因
測定機器の性能 (センサー精度、振動、温度変化など) - 具体的対策
- 高精度モデルの機器に変更
- 測定環境の固定 (温度、床面、周囲の振動)
- 複数回測定し平均を採用
- 朝一番など「測定環境が安定した時間帯」で測定
3.3 「c. 試験参加者が測定時に体を揺らしたり、正しい姿勢を維持できない」
- 分類
両方の問題 - 原因
試験参加者の姿勢・協力度合 - 具体的対策
- 測定前に姿勢の指導を徹底 (両足を揃える、静止するなど)
- 測定直前の安静時間 (30秒〜1分) を設定
- 高齢者や不安定な人には手すりつき測定器の使用
- 測定者による立ち位置・姿勢チェックをSOP化
3.4 「d. 試験参加者が乗るたびに数値が安定するまで数秒以上揺れる」
- 分類
定度 (precision) の問題 - 原因
対象者の動きまたは測定機器の安定性問題 - 具体的対策
- 測定時に「完全停止」してもらう (5秒程度など)
- 針・数値が安定した時点のみ記録するルールの徹底
- 周囲環境の振動源 (近くの機械、床の共振) の除去
- 安定表示機能付きの電子体重計の導入
3.5 「e. 測定タイミングが試験参加者ごとにバラバラ」
- 分類
定度の低下(分散が増える)+体系的誤差の可能性 - 原因
対象者の状態が統一されていない - 具体的対策
- 測定時間帯の統一 (例: 朝食前、起床後1時間以内)
- 服装の統一 (Tシャツ1枚、ポケットの中身なしなど)
- 水分摂取についての制限 (測定前30分は飲食禁止)
- 測定前の排尿ルールの設定
- 測定条件をすべて記録し、逸脱を管理
まとめ
機能性表示食品のヒト試験では、測定機器のズレ (真度の低下)、測定値のバラつき(定度の低下)、試験参加者の行動・姿勢・状態の違いといった要因が、介入効果の見え方に大きな影響を与えます。
測定誤差が大きいと、
- 効果量が希釈される
- 統計学的パワーが低下する
- 結果が不安定になる
- 最悪「効果なし」と誤判定される
という深刻なリスクがあります。
だからこそ、測定条件の統一・機器の精度管理・被験者指導の徹底は、統計解析より先に取り組むべき最重要事項です。

