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子どもを対象とした臨床試験の「空白」を埋める

アウトライン
  1. 作成日: 2025/11/18
  2. 更新日: –

はじめに

2025年11月6日、WHOは新たな技術報告書 “The future of paediatric clinical trials – setting research priorities for child health” を発表しました。

このなかで、0〜9歳児を対象とした介入試験や臨床研究における重大なエビデンスギャップを埋めるための172の優先研究課題が提示されています。

なぜ今、子どもの臨床試験なのか?

近年、子どもの健康において大きな進展があったものの、改善の恩恵が国や地域によって偏っており、特に低・中所得国では依然として予防可能な病気による罹患・死亡が高い状態が続いています。

図. 1990年から2023年までの世界の新生児死亡率および5歳未満児死亡率の推移 (The future of paediatric clinical trials – setting research priorities for child healthのFig.1より引用)

WHOアジェンダの構成と特徴

このアジェンダは、380人以上の専門家・研究機関・国のプログラム責任者・地域コミュニティ代表が協議・提案に参加し、653件の研究質問を収集して精査したうえで、最終的に172の優先すべき臨床研究テーマを確定しています。

優先テーマは、感染症・非感染性疾患・新生児・幼児発達・栄養など多岐に渡り、「実行可能性」「拡張性」「公平な影」が重視されています。

統計解析担当者として考えるべきポイント

対象集団拡大の必要性: 0〜9歳という年齢層、特に低・中所得国の子どもが対象となっており、従来の成人中心設計からの転換が求められています。

研究設計・割付/統計モデルの適用: 小児試験ではサンプル数・倫理的配慮・介入の継続性・脱落リスクなどの課題が一層深いため、割付 (例:最小化法・層別ランダム化) や多変量解析モデル、欠測データ対策 (脱落傾向調整・多重代入) などを前提に設計することが重要です。

エビデンス生成から政策反映までの流れ: アジェンダは「どこにエビデンスが最も必要か」を明示しており、統計解析担当者としては「政策・ガイドラインへの反映可能性」を意識したアウトカム選定やサブグループ解析を設計段階から考慮すべきです。

多国・多施設連携の促進: 報告書には「地域・国を超えた試験」「研究が国の健康システムに統合されていること」「資金調達を協調すること」の必要が強調されており、実施面・解析面ともにグローバルな視点が不可欠です。

私たちがこれから考えていくこと

今回のWHOアジェンダは、設計段階から統計解析部門が「子どもを対象とした試験の独自性・倫理性・脱落対策・政策インパクト」を加味して関与することを促しています。特に、食品や未承認介入を対象とする小規模試験の領域では、このような“優先される研究課題”に準じる設計を行うことで、国際的な文脈でも評価される可能性が高まります。

また、統計解析担当者としては、試験デザインの早期段階から「脱落によるバイアス」「子ども特有の応答変動」「少数群での検出力低下」などを見越した解析計画 (SAP) を立てておくことで、WHOが提示するアジェンダに沿ったエビデンスを生み出すことに貢献できます。


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参考文献